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BCP策定・運用 2021/02/15

中小企業のBCPは「形」より「中身」を重視しよう!

中小企業がBCP(事業継続計画)を作れないホンネ
信用調査会社大手の帝国データバンクは、2016年以降、毎年企業のBCP策定率について調査し、レポートを発行しています。
2020年6月に発行された最新のレポートでは、1万1,979社からの有効回答を得て、結果をまとめています。まず、全体の策定率は16.6%でした。これを規模別でみると、「大企業」は 30.8%が BCPを策定しており、全体を大きく上回っています。しかし、「中小企業」では 13.6%、「小規模企業」では 7.9%で低位にとどまっています。
 
上記のグラフから、BCP の策定状況は企業規模で大きく差が表れ、企業規模が小さいほどBCPの策定率は低い傾向が明らかとなります。

では、BCPはなぜ策定されないのでしょうか?帝国データバンクの調査では、BCPを策定していない企業にその理由を尋ねています。
その結果、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が 41.9%で最も高く(複数回答、以下同)、次いで、「策定する人材を確保できない」(28.7%)や「書類作りで終わってしまい、実践的に使える計
画にすることが難しい」(28.6%)といった回答が上位を占めました。
ここからは、BCPの重要性は理解しているが、上記の理由によりBCPが策定できない中小企業の実情が窺えます。

中小企業がBCPを策定することのメリット
さて、ここで改めて言いたいことは、中小企業「こそ」BCPの策定が必要であるということです。そして、BCP策定のメリットを大きく受けることができるのも中小企業であるということです。

経営基盤が必ずしも万全ではない中小企業にとって、自然災害の影響はきわめて深刻です。東日本大震災では、地震の被害を直接受けていない会社でも、得意先の被災等のサプライチェーンの影響で倒産してしまった二次的被害が数多くありました。
東京商工リサーチが2019年に発表した「「東日本大震災」関連倒産状況」調査では、倒産累計1,903件の内、事務所や工場などが直接損壊を受けた「直接型」は202件(同10.6%)に対し、取引先・仕入先の被災による販路縮小などが影響した「間接型」が1,701件(構成比89.3%)であったとの報告が出ています。

「間接型」が圧倒的に多い理由としては、倒産した企業はもともと経営体力が脆弱で、震災が業績不振に追い打ちをかけたことが大きな要因と考えられています。
社外からの要因に大きく影響を受ける中小企業だからこそ、自社事業の脆弱性を把握・リスクを回避し、いち早い事業復旧に向けた戦略を定めたBCPが重要になってくるのです。

BCPは単に有事の際に役立つだけではありません。BCPを策定し、改善を繰り返す過程の中で、企業の事業継続力を高めることにつながります。
例えば、自社工場が被災して製造が困難になった場合を想定し、同業他社と事前に有事の際は互いに代替生産を行うための協定を結ぶ。このような平時における取り組みの中で、新たな協力体制や販路の拡大に成功した例もあります。
また、復旧のために優先すべき業務を絞り込み、経営資源の弱点を抽出することは、現状の事業の見直しを行うことにつながります。現在主力だが先細る可能性があるA事業と、現状の売上は少ないが今後市場での伸びが期待できるB事業では、どちらを優先すべきなのか。このような問いを自社の後継者を含む若手社員で構成されたBCP策定グループに検討させ、事業承継に役立てた経営者もいます。

このようなBCP策定を通した事業継続への取り組みは、大企業と比して使えるリソース(ヒト・カネ・モノ)が限られている中小企業こそ、柔軟に実施でき、そして得られる効果は大きいと考えます。

中小企業のBCPにおいて重要なことは、形式にとらわれず実用的で経営に役立つものにすることです。BCPを策定していれば取得しやすくなる、中小企業を対象とした税制優遇・金融支援・補助金等の制度もあります。
これらの詳細は、オンラインセミナー「従業員数300名以下の企業のBCPのつくり方」にてお伝えいたします。ぜひご参加ください。

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(出典)
株式会社帝国データバンク『特別企画:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査』https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200606.pdf
株式会社東京商工リサーチ『“震災から8年”「東日本大震災」関連倒産状況(2019年2月28日現在)
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190308_03.html

 

Writer 研究員 中林那由多